あかつき川柳会第138回定例句会は1月12日(金)、投句者35名を含め88名の参加で開かれました。初参加は奈良市の阿部紀子さん、大阪市の船木しげ子さん、前田良子さんです。今月のお話は、番傘川柳会の菱木誠さんが「川柳のユーモア」題して川柳の三要素「穿ち」「軽み」「滑稽」についていろいろ典型的な川柳を紹介しながら説明されました。川柳のユーモアに関して言えば「ユーモアとは・・・人肌の温かみが感じられる笑い」であり、四コマ漫画のように起承転結でオチのある句、チャップリンの映画のようにペーソスを伴ったユーモアだそうです。駄洒落や語呂合わせでの言語遊戯に陥らず、句品を大事にして人間や社会をまじめに詠み、読んでも聞いてもいい感じを持つ句を作るように心掛けましょう、とのことです。

「句品を保つための五か条」1.十七文字のリズムを大切に。2.標語やダジャレ、語呂合わせでなく。3.自然に湧き出る笑いを大切に。4.卑猥、下品、低俗に陥らず。5.ひとや物事をけなしたり、中傷せず、差別用語、不快な言葉、隠語を使わない。(性別、人種、民族、階級、職業、宗教、身体又は精神的な障害、隠語やスラング、その他品位を落したり不快感を与える語句は使わない。民族や人を誹謗中傷、いわゆるヘイトスピーチになるような言葉は特に慎むべきです。)

松岡  篤 選
(天の句) 初デート今年も妻の墓参り 善之
(地の句) 先ずは亡夫へ見せる娘の初任給 和子
(人の句) 初耳のように母さん聞いてくれ ダン吉
(佳 吟) 初対面軽い会釈でご挨拶 常男
目標を並べただけの初日記 敏子
初出勤息子他人に見えた朝 常男
初笑い配ってくれた福男
新生児先ず掴むのは熨斗袋 信二
(軸 吟) 初仕事妻に指示され餅を焼く

三宅 保州 選
(天の句) 母がまだ生きております梅の壺 栄子
(地の句) 盆梅の幹の太さに棲む命 はこべ
(人の句) 春浅く梅の香届く彬の碑 鮎子
(佳 吟) 毎朝の梅干一個かかせない 紀乃
小正月もう南から梅だより いさお
蝋梅のほのかに香る寒の入り ばっは
学問の神に寄り添い梅の咲く 朝子
蝋梅の香にまほろぼの風の中 浩子
(軸 吟) 一対の古梅ふくいくたり旧家 保州
昆布
鈴木 栄子 選
(天の句) じわじわと僕も昆布も味を出す 常男
(地の句) 餓鬼のころ昆布しがんだ自慢の歯 敏子
(人の句) 吸い物になじむ速さやとろろ昆布 喜八郎
(佳 吟) 塩昆布を添えたぜんざいから笑顔 惠美子
たくさんの昆布食べろと髪が言う 櫻田秀夫
空きっ腹昆布しゃぶって虫押さえ 松井秀夫
鏡餅の上にどっかり熨斗昆布 近藤正
鍋シーズン利尻昆布が幅利かす 浩子
(軸 吟) 湯豆腐にとろろお酒を喜ばす 栄子
満ちる
真鍋心平太 選
(天の句) 満月はすぐに頭上を通り過ぎ 和雄
(地の句) お隣の花は真っ赤に満ちている 一行
(人の句) 満期利子やっとランチが食える程
(佳 吟) 満杯のビール眼で飲み口で飲み
満腹に遠く心も満たされず 喜八郎
満面の笑みに潜んでいる嫉妬 保州
ふくよかな国に釘打つ者が居る 信二
満ちたりたあれから僕がワヤになる ダン吉
(軸 吟) 満ち足りてちょっと寂しい影法師 心平太
時事吟
岩佐ダン吉 選
(天の句) 原発がなくても電気つくはずだ 保州
(地の句) 国債は借りたお金の借用書 善之
(人の句) 四十八手にだんまり入れた貴乃花 常男
(佳 吟) 核ゴミの処理もそのまま再稼働 浩子
沖縄をどこまで泣かす基地と事故 一志
この方のおつむは明治のまんまです 川口武
火葬場の少年キッと胴震い 鮎子
忘れないアトムの心ちひろの絵 鮎子
(軸 吟) 栄誉賞乱発をして息を継ぐ ダン吉