あかつき川柳会第172回定例句会は「誌上句会」として117人が参加し、11月12日に開かれました。初参加は八尾市の竹本啓子さんです。時事吟では、新型コロナウイルスに関するものが出尽くしたのか、「反対の民意にエール都構想 もと」のように大阪都構想の住民投票による否決に関したもの、政府による学術会議任命拒否に関し「気に食わぬ学術会議切り刻む 一志」、トランプ再選ならずの「トランプの野望コロナが打ち砕き 渓節」、そして「核禁止世論が世界包囲する 一行」と詠って日本は参加しなかった核兵器禁止条約を取り上げています。一方朝日歌壇を覗いてみると「だんだんに馴れてきますと親しげにすり寄ってくる名はファシズム 我孫子市 松村 幸一」「批准国地図上見れば小さくも核兵器禁止へ五十の重き 柏市 菅谷  修」と鋭く詠っていました。

意外だったのは、都合の悪い質問には答えず、ただ原稿を棒読みにし、「お答えを差し控える」「現時点においては想定していない」を連発する菅総理を詠った句が少なかったことです。また40年を超す老朽原発が例外規定を適用して再稼働が具体化していくことを批判する川柳がなかったことです。自治体の歳入が少ないのでそのような原発にでも再稼働を認めて原発マネーを得たい、そして「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に応募し最大20億円の交付を受けたい、そういう自治体を金で釣る政府のやり方には怒りの前に悲しくなります。どのように川柳でこの気持ちを伝えられるでしょうか?
席題はありません。

(天の句)
(地の句)
(人の句)
(佳 吟)
(軸 吟)
怪しい
井澤 壽峰 選
(天の句) 人間の疑心暗鬼にある憂い 寿之
(地の句) ATM怪しい影が付き纏う 松井秀夫
(人の句) 怪しげな治安どうなる星条旗 堅坊
(佳 吟) 重箱の隅を検事の目がつつく 北朗
怪しさがぶつかり合った世界地図 みつ子
詐欺集団嘘八百を天こ盛り 満智子
怪しいと放っておけない脳回路 松井敏子
何かある銚子二本もついている 栄子
(軸 吟) どう見ても見知らぬ客が通夜の席 壽峰

原田すみ子 選
(天の句) 雑音も和音になっていて家族 みつ江
(地の句) カラカラと風の動きを舞う枯葉 朝子
(人の句) 音もなく時間が過ぎる座禅堂 克己
(佳 吟) 駅うどん啜る戦士の朝の音 寿之
音量でいさかい起こす老いの耳 世潮
歌舞伎では雪は太鼓の音で降り 正康
騒音なものか秋の運動会 正康
音もなく監視されては不気味です
(軸 吟) 淋しがり音のする方ばかり行く すみ子
世間
松井 敏子 選
(天の句) 老眼鏡外し斜めに見る世間 寺井弘子
(地の句) 父の背が世間の風を受け止める 楓楽
(人の句) 世間とのズレは私か政治家か 古池蛙
(佳 吟) 底辺で暮らせば世間あたたかい 楓楽
真っ白で生まれ世間の垢まみれ 北朗
見ていないふりで見ている世間の目
騒がしい世間がいやな深海魚 常男
世間体気にせず嘘を料理する 公輔
(軸 吟) コロナ禍で世間話に飢えている 松井敏子
時事吟
川端 一歩 選
(天の句) 核禁止世論が世界包囲する 一行
(地の句) 分断も選挙の後はノーサイド 五二
(人の句) マスク取りうまい空気を深呼吸 朝子
(佳 吟) 決まりです悪の烙印核兵器 近藤正
環境を変えられ熊が町に来る 比呂志
鬼滅の刃ブーム市松模様着る 楓楽
スポーツはすごい心に灯を点す 栄子
政権を替える今度の総選挙 川口武
(軸 吟) ライオンの絵あれは文化勲章だ 一歩